【第5話】パパとママ
朝目が覚めると両隣にはパパとママがいる。
朝ごはん、台所に立つ後ろ姿のママ。
目の前のパパは私に笑って話かけてくれる。
小学校はパパと横に並んで一緒に手を繋いで歩く。
帰りはママが迎えに来てくれて、いつも笑顔なママ。手を振ってくれる。
スーパーで一緒にお買い物をして、ママは私の好きな物を言わなくてもカゴに入れてくれる。
夜ご飯はパパとママと一緒になって楽しく食べる。
みんなで一緒にお風呂に入って、みんなで仲良く一緒に寝る。
ある日、ママが死んだ。
パパは悲しそうだった。
ママが寝ているベッドに頭を埋めて泣いていた。
パパは私の事をじっと見てから抱きしめてくれた。
朝目が覚めると、パパの両腕の中にいる。
朝ごはん、台所には後ろ姿のパパ。
目の前には卵かけごはん。
小学校はいつもと同じパパと横に並んで手を繋いで歩く。
帰りはパパが走って迎えにきてくれる。
とても忙しそう、でも笑顔。
スーパーで一緒にお買い物するけど、パパはとっても困った顔をしている。いつもよりカゴの中がぐちゃぐちゃ。それじゃないよ。
夜ご飯、パパはエプロンをつけてキッチンに立っている。
目の前には焦げた焼きそば。
だけどパパは美味しそうに私の方を向いて笑いながら食べている。
一緒にお風呂に入っている時もパパは笑っている。
一緒に髪乾かしている時も、
一緒に歯磨きをしている時も、
一緒に横になって寝る時も、
パパは笑っている。
いつもパパは笑っている。
笑っているけど、眠った後には目から涙が出ていた。
私はこっそりパパに手紙を書いた。
朝目が覚めると、パパがまた泣いている。
私のことに気づくと、あの時のように私の目を見て抱きしめてくれた。
とても静かな朝だったけど、どうしてだろう、いつもは絶対聞こえないのに不思議とパパの「ありがとう」という声が聞こえた気がした。