虹1ポンドの物語 

ちょっと笑って、考えさせられて、楽しくなるような物語書いてます。世界観を大事にしてます。

【第3話】コーヒーと女と、男。

ここはとあるカフェ。

お店は二階建ての造りになっており、一階部分が半地下になっている。

昼夜問わず人で溢れ返っている。

おススメは日替わりコーヒーで、それを目当てにレジ前に並ぶほどだ。

今日はいつも以上に人が多い。

真夏せいだろうか。

 

 


「あついな……全くついてない……なんでこんな時に」

 

 

 
その男はお店に入ると必ずいつも席に座る。

一階の出入り口から階段を下りてすぐ近くの席だ。

後ろの壁にもたれながら店内を見渡せる事ができる。

なによりもトイレに行きやすい。

しかし、今日に限って人が多い。

狙っていた席はサラリーマン風の男が既に座っていて埋まっていた。

 

男はいつもと違う席に座ることにする。

 

 
「この場所で書くしかないか」

 
まわりを見渡すと、パソコンで仕事をしている男性や世間話をしている女性の2人組みがいる。他にも、大学生や外人など様々な人が見受けられる。

 

私は考え事をしながら過去のことを書くことが好きだ。


「そういえば、この前、事故があった。交通事故だ。普段過ごしていると見たくないものも目に入って見てしまうことがある。交通事故に遭った男は赤信号に気づかずにそのまま車に轢かれた。一瞬、自殺のようにも思えたが、それは違う。なぜなら男は誰かを追いかけているようにも見えたからだ。真相は分からないが彼の視線の先には1人の女性の姿があった。しかし一方で、車に轢かれた姿を見てしまったこちらの気持ちも考えて欲しい。亡くなった彼には申し訳ないが、決して良い気持ちはしない。そもそも、赤信号に気づかない彼も悪いし、急に交差点に飛び込む気持ちが知れない。もっと命を大切にして欲しいものだ。そんな奴は、きっと、夢か現実か区別のつかないくらいどうしようもないやつに決まってる。」

 

 


しばらく考え事をしていると、入り口から女の子がお店に入ってくる。


日替わりコーヒーを頼んだ彼女は、こんな真夏にもかかわらず、ホットを頼んでいた。


注文を終えると、どうやら空いている席を探している。

 

その時だった。

 

下へ降りるときに階段でつまづき、近くで仕事をしていた男にコーヒーが少しかかってしまう。

 

彼は「あついな」と 言うと同時に、彼女が謝る。

 

彼はさほど気にせずパソコンで仕事続けるように文字を打ち始める。

 

その後になにやらボソボソとずっと言っている。


しっかりとは聞き取れなかった。

 

眉間にしわを寄せている様子からすると怒りや不満を抱いているのだろう。

 

彼女がとなりに来た。


すると、彼女はいきなり『世の中って不思議ですよね』と言ってくる。

 

なぜ、その質問をいきなり問いかけてくるのかが分からなかった。

 

理解ができない。


続けて彼女は言う。

 
『皆んな、なんとなくで生きてる。自分の意思で取捨選択してるようにみえるけど、実は気づかないだけで、誰かに操作されてたりしている。ここのコーヒーだってそう。このコーヒーを飲むために来ている人なんてほとんどいない。見方を変えれば、仕事をしたり誰かと話すためにコーヒーを買わされてるだって。』

 
それから少し間をあけて

 

 


『まるで、運命が誰かを決めているように』

 

 

 

そう言うと、彼女は一気にホットのコーヒーを飲み干して立ち上がる。

そのまま、お店の出口へと向かっていく。

 

 

男は何が起きたのか分からないまま、そのまま呆然としてしまう。

しかし、どこか納得感があり、彼女のことを頭の中で思い返す。

 

 

すると、前に起きた交通事故の時にいた女に見覚えがあった。

 

男はすぐに立ちがある。

 

彼女の後を追うために出口へと向かう。

 

ふと、出口に向かう階段をあがる時だった。

 

熱いコーヒーをかけられたサラリーマン風の男のパソコンに目がいった。

 

どうやら男の仕事はライターか何かで、作品を書いているようだ。

 

特に気にする必要も無かったのだが、どうしてか目がいってしまった。

 

その作品の書き出しはこうだった。

 

 

 

 

 

ーここはとあるカフェ。

お店は二階建ての造りになっており、一階部分が半地下になっている。

昼夜問わず人で溢れ返っている。

おススメは日替わりコーヒーで、それを目当てにレジ前に並ぶほどだ。

今日はいつも以上に人が多い。

真夏せいだろうか。

 

 

 

 

 

男は、一瞬立ち止まった。

 

直ぐに出口へと視線を向けて急いで出ていった。

 

出ていくいしかなかった。

 

その時には既に自分の意志ではなく誰かに操られている気さえした。

 

 

 

最後に、こうして階段下でパソコンを打っている私だが、ふと思ったことがある。

 

 

「私のこの運命も誰かの手によって作られた物語に過ぎないのかもしれない。」