虹1ポンドの物語 

ちょっと笑って、考えさせられて、楽しくなるような物語書いてます。世界観を大事にしてます。

【第11話】金の斧、銀の斧


※小さなお子さんと一緒にご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

とある村に1人の男がいました。
彼はどこにでもいる普通の男で、1人で森の中に住んでいました。

 

彼は言います。

 

 

「隠居生活も悪くはないな」

 

 

そう言って独り身でずーっと独身貴族を貫いていました。


彼はいつものように、軽い朝食を済ませたあと斧を手に持ち薪をとりにいきます。

 

 

森には他に誰もいません。

 


森にいるのは可愛いリスや、鹿などの動物ばかりです。


長い時間ここにいるので、雄か雌かは見るだけで判断できるようになりました。

 

 

 

「やぁ、ジャック&ベティ!あれ、今日はルーシーは一緒じゃないんだね!」

 

 

 

彼ら愉快な口調で動物達に語りかけます。
動物たちも不思議に楽しそうです。

 

 

 

彼は湖の近くに到着すると


「よし、このあたりでいいかな」


と、持っていた斧を振りかざします。

 

すると、

 

 

スポッ!

 

手から斧が抜け落ちて後ろの湖の方に落としてしまいました。

 

「ああ、、なんということだ。」

 

 

彼はとても悲しそうです。

 

 

「あの斧がないと薪が作れなくて隠居生活ができなくなってしまう…」

 

 

 

すると、なんということでしょう。
突如、湖が黄金色に光出して、ぶくぶくと泡が湧き上がってきます。

 

「な、なにごと!」


彼はじっと目を凝らします。

黄金の光の湖から女神様がゆっくりと出てきたのです。

 

「な、なにごと!part2!」(心の声)

 

女神様はとても優しそうで、この世の人とは思えない姿でした。

 

女神様は彼にこう言いました。

 

 

「あなたが落としたのはこの、金の斧ですか?」

 

彼はまだ目の前で何が起こっているのか信じられない様子です。

 

「いいえ、私が落としのは金の斧ではありません」

 

彼は答えます。

 

すると、女神様は、わざとらしく後ろに隠していたもう一方の手を出してこう言いました。

 

「では、あなたが落としのはこの銀の斧ですか?」

 

男は少し考えて女神様にいいました。

 

 

「いいえ、私が落としたの銀の斧でもありません」

 

 

女神は優しい微笑みをしてふたたび彼に問いかけました。

 

 

「正直ものですね。ではあなたが落としたのはこのボロボロの斧ですか?」

 

 

彼は迷わず直ぐにこう言いました。

「いいえ、違います!」

 

 

 

女神様は眉をひそめました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女神様、私はあなたとの恋に落ちてしまったようです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神様は予想だにもしない回答だったので不覚にも「えっ」と一言を漏らしてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

続けて男は言いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が欲しいのは女神様、あなたとのかけがえのない時間です。どうか、この湖の中ではなく地上で私と一緒に暮らしていただけないでしょうか?今は隠居暮らしで私も独り身でお金にも余裕があります。ただ、いきなり一緒になりましょうと言われたところで女神様とて混乱するお気持ちも十分お察し致します。ですので、もちろん友達からで全く構いません。私は小さい頃から動物が好きですし、この森にもずっと通っています。それに雨にも負けず風にも負けぬ丈夫な身体を持っています。欲は無く、可愛い動物からも好かれている自信もあります。ちょうど今日もここに来る時にリスのジャックと鹿のベティにも会いました。女神様が私のような人間ごとき有機物を相手にされないのは承知の上です!もし好きなタイプの男性を聞かれた女神様なら「そうねぇ、とりあえず特殊な能力とかは別に気にしていなんだけど、最低限はあのマント?神様といえばローブみたいなのを羽織ってんじゃん?あれは最低限着こなしてて欲しいよね、あとそれに加えて出来ればシワとかも無い状態で」と仰るかと思いますが、こちらも着こなす自信はありますし、ここに来る前にはクリーニング屋さん顔負けの仕立て上げも行っておりましたのでオールクリアです。いずれにしても、こうしてとある森に1人男が住んでいる。そして、とある湖にまごうことなき女神であられる1人の女性が住んでいらっしゃる。その他に誰もいないのです。これはまさに、旧約聖書の創世記第2章よろしく『エデンの園』なのです!そう、まさしく私とあなたは現代版のアダムとイブであり、リンゴではないですが、先ほどのボロボロ斧をもって一生をともにしようではありませんか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は今までにないほど熱量をもった告白を女神様にしました。

 


すると、女神様はゆっくりと口を開きます。

 

 

 

 

 

 


「………せん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


うまく聞き取れませんでしたが

出来ないなら出来ないとはっきりと聞きたくて彼はは諦めきれず、もう一度聞き直します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「20分3000円」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


今度ははっきりと聞こえました。
確かに女神様は「20分3000円」と言いました。

 


男はびっくりしましたが心の中で

 

 

確かに……

女神様はお忙しいから時間を切り売りしているのだろう…

仕方ない…

 

 

と言い聞かせて

 

 

 

「分かりました」と言ようとした時です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「延長オプションアリヨー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急なカタコトでした。
男はスッともとに元にもどり、振り返って吐き捨てるようにボソっと、一言こう言いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「やっぱり中国産の斧はダメだな」

 

 

 

 

 

 

 

 


おしまい。